そとん壁と、時間で育つ家づくりの話
日本の家づくりは、多くの場合「完成した瞬間」が100点です。
引き渡しの日がいちばんきれいで、いちばん新しく、そこから先は傷がつけば減点、汚れれば劣化と呼ばれていく。
けれど海外では、家は完成したときがゴールではありません。
住み始めてからの暮らし方や手入れによって、時間とともに評価されていくもの。
経年劣化ではなく、経年美化という考え方が、自然に受け入れられています。
私は、そんな家づくりをしたいとずっと思ってきました。
完成したときがピークではなく、住み始めてから少しずつ加点されていく家を。
高千穂シラスの「そとん壁」と出会って
モデルハウスで外壁に採用しているのが、高千穂シラスのそとん壁です。
正直に言えば、最初に惹かれたのは「性能」よりも、違和感のなさでした。
派手さはないのに、空間として落ち着いている。
外にあっても、周囲の景色から浮かない。
私は昔、仏画を趣味で描いていました。
仏画に使われる色は、鉱物を砕いてつくられる顔料が多く、彩度が低く、主張しすぎません。
時間をかけて目に馴染み、見続けても疲れない色です。
そとん壁の色を見たとき、その鉱物の色ととても近いものを感じました。
色として完成した時が、ピークじゃない。
光や時間とともに、少しずつ落ち着いていく色です。
モデルハウスに来られる方は、皆さんほとんど「いい色だね」と自然と声に出されます。
最近はやりのグレーだから?と思われるかもしれませんが、皆さんが知らず知らずに感じているアースカラーのような精神を安定させるような落ち着きある色が誰から見ても腑に落ちるような心地にさせるのかもしれません。
実際に使ってみて見えてきた機能性
このモデルハウスは全館空調で、換気システムも入っています。
そのため、湿度やにおいに関しては、本来どの家よりも条件が良い環境です。
それでも、はっきりと感じることがあります。
20畳程度の部屋でも十分に香りを感じられる性能のディフューザーを、約2畳のシューズクロークに置いています。それでもこれまで、来場された方が香りに気づいたことは一度もありません。
「いい匂いがしない家」なのです。
もちろん全館空調には換気システムが搭載されており、その影響もあると思います。それを差し引いても、非常に高い性能だと感じています。
火砕流から生まれたこの素材が持つ能力は、人の手によって見出されたものですが、その本質は、もともと大地の中にあった力そのものだと感じています。
これは、塗り壁が香り成分を一時的に吸着し、空気の変化を緩衝している可能性が高いと感じています。
強く消すのではなく、気づかれないレベルまで静かに整える。
その振る舞いは、とても素材らしいものです。

数字が良すぎる環境だからこそ
全館空調のモデルハウスでは、数値だけを見ると、どうしても良い結果が出ます。
だからこそ私は、数字をそのまま性能だとは考えていません。
同じ条件の全館空調・同規模の住宅と比較することで、
それでもなお差が出る部分に意味がある。
外壁表面温度の変化、
室内環境の安定性、
そして、においや湿度の「振れ幅」。
現場で日常的に空気を感じている立場だからこそ、良すぎる数字をそのまま受け取らず、体感と照らし合わせたいと思っています。
すでに高性能住宅であるこのモデルハウスでは、そとん壁を測定すれば数値はどうしても良く出ます。それでも、体感としてはっきり分かる違いがあります。

モデルハウスを研究フィールドに
このモデルハウスは、見せるためだけの場所ではありません。
季節をまたいだ温湿度の変化、
外壁の経年変化、
時間とともにどう表情が変わっていくのか。
そうしたデータを蓄積し、
素材としての将来性を、実際の暮らしの中で見ていきたいと考えています。
それは、売るためのデータではなく、
育てていくための記録です。
完成はゴールじゃない
そとん壁は、施工が終わった瞬間に完成する素材ではありません。
鉱物の色が時間に馴染み、
空気を静かに整え、
暮らしとともに落ち着いていく。
完成はゴールではなく、暮らしの始まり。
経年劣化ではなく、経年美化がきちんと見える家。
私たちは、そんな家づくりを、これからも続けていきたいと思っています。

投稿者:星村
